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[SDGsトレイン 「美しい時代へ号」から読み解く 広告会社が社会のためにできること]

SDGsトレイン「美しい時代へ号」から読み解く広告会社が社会のためにできること

2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」。2020年9月8日、このSDGsをテーマにした特別企画車両「SDGsトレイン2020」が阪急阪神ホールディングスと東急グループの連携により運行を開始しました。東急グループが東急線で運行する列車は、東急グループスローガン「美しい時代へー東急グループ」から、「美しい時代へ号」という名前で、現在も運行しています。車内では東急グループのさまざまな取り組みがポスターギャラリーとして展開されています。そこには一体どのようなドラマがあったのか、プロジェクトメンバーの皆さんにお話を伺いました。

  • 中澤 修
    アカウント
    プロデューサー
  • 丸原 孝紀
    サステナビリティ
    プランナー
    /
    コピーライター
  • 堀内 有為子
    クリエイティブ
    ディレクター
  • 森内 彩樹
    アカウント
    プランナー
  • 鳴井 浩太
    プロデューサー

メンバーと役割

中澤 中澤です。2001年に入社後、テレビ、新聞、クロスメディアプランニング、PR、プロモーション、OOHを経て東急株式会社の広報グループに出向し、現在は営業をしています。今回のSDGsトレインについては、東急株式会社広報グループに出向していた時期から現在に至るまで関わっており、鳴井さんとともに、企画の計画~実施までのプロデュースを担当しています。また、この企画を皮切りにはじまった「美しい時代へ」ギャラリーという、東急グループのブランド広告のプロデュース業務も行っています。

丸原 SDGsプランニング・ユニット「POZI」のプランナー・コピーライターとして、「美しい時代へ」ギャラリーやSDGsトレインの車内に掲載する広告のコピーライティングやムービーの企画に携わっています。「POZI」とは、企業や団体における社会的な取り組みを中心に企画をする部署です。POZIは2014年、SDGsが採択される前にスタートした有志による自主的なチームとしてスタートしました。それが、東急株式会社が2018年に中期経営計画として“Make the Sustainable Growth”を掲げたこともあり、東急エージェンシーもよりそれに近い立場でSDGsを行う必要があるとの考えのもと、2019年に部門化されました。もともと個人でNPOやNGOなどで社会的な活動をしていたメンバーの想いを汲み取り、会社が部署を作って応援しているところが、東急エージェンシーらしいのではないでしょうか。

堀内 私は統合プランニング部でクリエイティブディレクターをしています。今回の企画ではディレクションだけでなく、コピーライターとして丸原さんと二人で手分けをして取材やコピーの制作も行いました。制作物の量がとても多かったので、よりSDGsに近い案件は知識のある丸原さんに、企業広告に近いものは私が、と得意なテーマごとに役割分担をしていきました。

森内 入社4年目で、営業をしている森内です。東急株式会社を中心として、東急グループ各社の担当営業をさせていただいています。今回のSDGsトレインでは、約3~4ヵ月の期間で、ラッピングデザイン/ポスター/動画といった制作物のディレクションから、広告掲載の指示までトータルでの進行管理を一貫して担当しました。

鳴井 私はもともと営業をしていたのですが、その後プランニング部門に移り、二子玉川ライズや渋谷ヒカリエの開業などの東急グループの再開発事業や渋谷の年末カウントダウンといった案件に携わってきました。2020年からは東急株式会社の広報に出向しています。このプロジェクトは社内外とても多くの方々と関わりながら進めていく必要があるのですが、各所との調整を含め中澤さんと共同でプロデュースをしています。

東急グループだからこそできるSDGsを具現化する

中澤 まず、阪急阪神ホールディングスが2019年度に「持続可能な開発目標(SDGs)」をテーマに掲げた列車「SDGsトレイン未来のゆめ・まち号」を運行開始しました。その後、DNAを同じくするという縁から、東急グループに連携のお話があり、2020年1月に両社の連携運行が決定しました。実施に向けては、SDGsの精神である「誰一人取り残さない」をテーマに、国・自治体・NPO・企業との連携、東急電鉄を始めとする東急グループ各社との連携作りを行うことを重視し、結果としては30近くの国・自治体・一般企業との連携を実現することができました。

森内 このプロジェクトには、大きく二つの目的があります。一つは、国や自治体・企業・市民団体などの多くの関係者を巻き込み、SDGs啓発ムーブメントに貢献すること。もう一つは、東急グループが100年間続けてきた「事業を通した社会課題解決の取り組み」をお客さまに伝わりやすく発信することです。新型コロナウイルスの影響もあり、当初予定していたよりも約半年遅い運行開始となりましたが、今まで約100年間継続してきた企業としての取り組みを、次の100年にもつないでいきたいという想いがあり、2020年9月から運行を開始する運びとなりました。

グループスローガン「美しい時代へ」について考え抜く

森内 このプロジェクトは、「東急らしさとは何か」をグループ会社の方に丹念にヒアリングして抽出し、チームメンバーでさまざまな角度から検証することの繰り返しでした。ルールブックには載っていないDNAの言語化ですね。クリエイティブを作りながら、紙やマニュアルに書かれていない社員の中にしか眠っていない価値観を探し当てていきました。本人が当たり前にやっていることが、実は他と違うことに気づかない。それを掘り起こすのに苦労しました。

堀内 いろいろな話を聞く中で共通項が見えてきたことが面白かったですね。その一つが、やってみようとする人をそっと応援する、個を尊重する姿勢です。よく見ると「美しい時代へ」につづくスローガンにも「一人ひとりが自分らしく生き…」という一節があります。いい企業だなと改めて思いました。知ることで好きになれるって、いいですね。

丸原 「美しい時代へ」という抽象的な概念を、どうやって沿線の皆さまに具体的にイメージしてもらえるか。自分たちが腹に落ちるまでトコトン考えることを、クライアントと東急エージェンシー、事業者の方も一緒になって取り組んできたという感じですね。SDGsの基本的な考え方として、豊かな自然環境があるから安定した社会がある、安定した社会があるからこそビジネスが持続的になる、という構造があります。東急グループは地域に根ざして事業を100年にわたって続けてきたので、SDGsを地でいく企業だと言えますね。伝えるうえで、本質的なところに向き合わざるを得ないですが、同じグループの企業として腹を割って提案できる関係性があることで、他の広告会社にはできない、深いSDGsコミュニケーションが実現できている感じがしますね。

鳴井 スローガンをSDGsと結び付けることで、自分たちが日々取り組んでいる仕事の世の中への提供価値がどういったものなのか、社員の皆さんが改めて認識するきっかけになるような構造にすることができたのではないでしょうか。それがこのプロジェクト対する理解や、運行や広告制作に対して前向きに協力いただきやすい環境の実現につながっているのだと思います。

広告会社×SDGs可能性

森内 さまざまな場所で耳にするものの、なかなかきちんと知ることができないのが「SDGs」だと思っています。今回の企画列車ではSDGsそのものや17目標を説明するものだけでなく、SDGsを身近なものとして感じられるようにさまざまな工夫を凝らしたポスターもあります。自分には関係ないと思っている方にいかに興味を持ってもらえるか、という視点は重要だなと思います。

森内 自分自身が東急線のユーザーということもあり、SDGsトレインが走り出してから巡り会う機会があるのですが、ある日のSDGsトレイン内で、お子さまが親御さんとともに車内ポスターを見ながら、SDGsについて勉強している姿を目の当たりにしました。こうしたシーンを目にすると、とても意義のある企画になったと実感しています。お客さまから駅員さんに対して「SDGsトレインはいつどこで走っているか」といった問い合わせも多くあったと聞きました。

堀内 SDGsというと、時代の流れに合わせて新しく何かを始めようという企業も多いのですが、「美しい時代」ギャラリーでは、今までみんなの記憶に埋もれていた過去の活動を掘り起こしています。30近くあるエピソードの多くは、SDGsという言葉がなかった時代に「誰か」が自分の想いで行った活動。そこには、その人個人の強い意思があることが多く、ヒアリングしていてとても興味深かったです。SDGsという名前がついていなかった物事にSDGsのエッセンスを見出す。このような企画の発想も、広告会社だからこそできるSDGsなのではないでしょうか。

丸原 ビジネスには生活者をパートナーとして社会を動かしていく力があります。SDGsのゴールに向かう取り組みを企業が推進することは、社会はもちろん、企業のサステナビリティにつながります。コミュニケーションを担う立場として、広告会社にはその動きを進めていく責任があると考えています。

中澤 「行動の10年」と言われるように、「やってる」風では世の中の信用を得られない時代になったと感じています。クライアントと本質的な社会課題解決を共創し、発信していくことが今後の広告コミュニケーションだと考えています。

鳴井 企業や事業活動の持続性に貢献することが、これからの広告コミュニケーションの役割の一つだと思います。SDGsという言葉や考え方が広まっても、誰しもが一つ一つの課題を、温度感を持って受け止めていくことは難しい。課題を課題として突きつけるだけではなく、その解決に半歩でも近づけるような事業やコミュニケーションのあり方をクライアントのパートナーとして考え実現し続けていくことが大切だと思っています。

もしもこのプロジェクト新人を招くとしたら

鳴井 このプロジェクトに携わるようになって、働くひとの想いや姿勢の積み重ねが企業にとってどれだけ大切かを改めて感じています。“らしく”あり続けることは時に簡単なことではないですが、自分の価値観への自信を持ち、さらに、周りを受け入れる包容力があるひとであれば、そのひとがいたからこそのアウトプットを生み続けていけるのではないかなと思います。

森内 やるべきことを諦めずにやりきる強さ、プロジェクトに関係する各者それぞれの正義を尊重する優しさ、そして物事をユニークにとらえられる姿勢を持った人。広告会社の営業職は、たくさんの関係者と連携を取り、時にはぶつかりながらも同じ目標に向かって、チーム一丸となって歩んでいくための舵をとる仕事だと思っています。予測不能な事態にも、解決志向をもって常にポジティブでいられると、楽しく仕事ができると思います!

堀内 社会に想いを持っている人がいいですね。今回の取材でも感じたのですが、会社から与えられた仕事だけではなく「自分は人生で何をしたいか、するべきだと思うか」という意志を持ち、実行している人がまわりを明るくし、ポジティブな空気を作っていると感じました。就職活動中の学生さんは、人生でのやりたいことと重なる仕事を選ぶのがまず大事だと思いますが、社会人になってからも、あの手この手で興味のある世界と関わっていってほしいです。

丸原 まだ絵にも言葉にもなっていない大事なことを抽出するのが大切な仕事なので「気づく力」がある人。広告は社会の空気を作っていくものなので、そういった責任感と視野を持てる人と働きたいです。それと、クライアントごとの考え方の違い、チームメンバーの感性の違い、社会と自分との感覚の違いなど、違いを尊重して楽しめるような人と、これまでとは違うコミュニケーションを作り出すチャレンジをしたいですね。

中澤 誠実に世の中を変えていこうと思える気持ちが強い人。周りと力を合わせた時、最大限に力を出せる人ですね。実績のないことに挑戦することを心から楽しみ、自分の領域を自分で決めず、絶えず進化していくことも大事だと思います。

“前から目線”で挑戦していきたいこと

森内 今回のプロジェクトはラッピング電車というリアルな体験価値によって生活者の気持ちを強く動かすきっかけを作りました。多くの人々の気持ちが動かされた結果、それが行動につながり、やがて文化になっていく。そんな企画を、東急沿線にとどまることなく、むしろ東急沿線発で全国に発信したいという夢があります。

鳴井 東急グループはリアルな顧客接点をたくさん持っている企業グループです。社会課題や価値観が移り変わり技術も進化し続けるなかで、リアルな存在がこれから持つべき価値がどういったものなのかを模索するプレーヤーが、東急のまちに集い・チャレンジする。そうした未来につながる新しい価値が生まれる可能性がある仕組み作りに関われると良いなと思います。

堀内 今回のプロジェクトの「つづき」を作っていきたいです。エピソードを掘り起こす中で魅力的な人々にお会いできたので、例えばポスターの主役同士の対談などをしてみたいですね。所属する会社は違っても、人や社会をみつめるまなざしが近い人をつなげることで、新しい活動やアイデアが生まれたら面白いなと思います。

丸原 「まろやかな社会」を作りたいです。それは長期的なビジョンを持っている東急グループだからできることなので。SDGsに関しても数値的なゴールでなく、社会のあり方といった目指すべき価値観を、実感ある形で伝えることに取り組んでいきたいです。

中澤 丸原さんと少し被りますが、何事もない日常が毎日訪れる「安心して暮らせる社会作り」ですかね。社会にとって良いことを、事業の力とコミュニケーションの力を掛け算して実現する、プロデューサーでありたいと思います。

こんな仲間と前から目線で仕事がしたい
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